志民社会学習会

第39回福岡オルターナティブ研究会

作物の「タネ」は誰のものか?―――『主要農作物種子法』廃止の意味―――

日時:2018年12月22日(土) 午後2時〜5時

場所:西南コミュニティセンター2階会議室(西南学院大学東キャンパスの東南側)

〒814−8511 福岡市早良区西新6丁目2−92

電話:092−823−3952(地下鉄西新駅3番出口、徒歩数分)

テーマ:タネとヒトの素敵な関係を壊さないために

講師:西川芳昭さん(にしかわよしあき、龍谷大学経済学部教授)

1960年 奈良県のタマネギとレンゲのたね屋に生まれる。京都大学農学部農林生物学科卒業・バーミンガム大学大学院生物学研究科および公共政策研究科修了 博士(農学)。国際協力事業団(現国際協力機構)・農林水産省・名古屋大学大学院教授等を経て現職。主著に『作物遺伝資源の農民参加型管理』『種子が消えればあなたも消える』編著に『地域振興 制度構築の多様性と課題』(吉田栄一と共編)『生物多様性を育む食と農』など。国内外をフィールドとして、農家の種子調達や品種管理の調査研究を手掛ける。

報告要旨:今春廃止された主要農作物種子法(以下種子法)について、その影響に対する懸念が広がっている。種子法は、国の責任のもと、稲・麦・大豆に関して各都道府県が、(1)奨励品種の決定に関わる試験の実施、(2)奨励品種の原種、原々種の生産、(3)種子生産圃場の指定、圃場審査、生産物審査、および種子生産に対する指導・助言、を行うことを定めていた。農業競争力強化という現政権の方針の中で、国会においても、農政審議会においても充分な議論のないまま主要農作物の種子供給の品質と量に対する政府の責任が放棄されたわけである。

しかし、法律が存在していた65年間生産者も消費者もほとんどこの法律の大切さに気付いていなかったことこそ問題であると考え、本講演では、最初に種子と食料に関する国際的な権利概念を理解したい。農民が自ら守ってきた遺伝資源から得られた利益の分配を受ける権利や、そのような政策決定に参加する権利、国家・地域・国民・農民が何を食べるか・作るか、さらに自給の範囲を決める食料主権などである。

「種子はだれかのものでもない。特定企業が作れるものでもない。農家が必要な種子を持続的に入手できる政治的・社会的環境整備は持続可能な社会実現に不可欠である。世界中の農家、特に小農は様々な戦略の中で種子を調達しており、その多様性が持続可能な社会の実現に重要な要素となる。」という現実を、農家も消費者も共有するために、国内外で実際にタネを守る仕組みを作っている人たちに学び、社会科学ができることについて共に考えたい。なお、本講演は科研費研究17H046217H04627の成果の社会共有活動にも位置付けている。

参考文献:

西川芳昭 2016  タネの文化史 EPTA 79号 12-17。

西川芳昭 2017 種子が消えればあなたも消える コモンズ。

西川芳昭 2017 「遺伝子組み換え時代の農民による品種育成・種子生産の実態と意義」 『農業と経済』 83巻2号 42-51。

西川芳昭 2018 種子法廃止を機に考える タネと暮らし 『婦人之友』 112巻7号 89-93。

参加費:無料(会の趣旨に共感される方はどなたでも参加できます)。

終了後、近くの居酒屋 (「じゃがいも弐番館」)で講師を囲む懇親会を予定して

います。

主催:福岡オルターナティブ研究会、 FNA(エフナ:アジア開発銀行福岡NGOフォーラム)

連絡先:fna@minos.ocn.ne.jpまたはFax:092-920-1873

資料準備の都合上、参加を希望される方は事前にご連絡ください。

前回の研究会(当初予定の第39回研究会、講師:中山智香子さん)は、台風のため中止・延期いたしましたので、順序を入れ替えて、今回の研究会を新たな第39回研究会といたします。中山報告は、第40回研究会として、来年2月9日(土)の開催といたします。詳細は後日お知らせします。

オルタ39 12月