志民社会学習会:資本主義を問う―ポスト資本主義とは?―

日時:2020年10月24日(土) 午後1時半〜4時45分(時間厳守)

場所:ふくふくプラザ(福岡市市民福祉プラザ)5階視聴覚室

福岡県福岡市中央区荒戸3丁目3番39号

電話:092-731-2929

テーマ: 気候危機の時代にこそ、ポスト資本主義を。

講師:斎藤幸平さん(大阪市立大学大学院経済学研究科准教授)

1987年生まれ。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想。著書に、『大洪水の前にーーーマルクスと惑星の物質代謝ーーー』 堀之内出版 2019年(本書のドイツ語版は2016年出版、英語版は2017年出版、この英語版によって、ドイッチャー記念賞を史上最年少、日本人初で受賞)。『未来への大分岐ーーー資本主義の終わりか、人間の終焉か?ーーー』(集英社新書 2019年)。『人新世の資本論』(集英社親書 2020年)。その他、編著、共著多数。

報告要旨:

人類はかつて経験したことのないような文明的危機に直面している。パンデミックだけではない。より深刻な危機である気候危機が迫ってきている。

この危機の時代を表す概念、それが「人新世」である。「人新世」とは、地質学の新しい時代区分であり、人間の経済活動が地球全体を覆っているという意味だ。実際、地表はビルや工場、道路、農地、ダム、ゴミ捨て場などで埋め尽くされ、海洋にはプラスチックが浮遊し、大気中の二酸化炭素も増加している。もはや、手つかずの自然は残っていない。そのような地球規模での開発が地球に破壊的な負荷をかけるようになっているのである。

人新世の原動力が、無限の経済成長を求め続ける資本主義にほかならない。資本主義は世界中を切り開き、掘り返し、ありとあらゆるものを商品化し、売りさばいてきた。本来は、人類のみならず、この惑星に暮らすあらゆる生命体にとっての「共通の家」、〈コモン〉である地球を囲い込み、一部の人々が独占するのが、資本主義なのである。

このままでは、環境危機はますます深まっていくことになる。それでも、資本主義は止まらない。それどころか、この危機を利用して、さらなる金儲けをしようとするだろう。水不足、食糧危機、海面上昇など、庶民にとっては生活に不可欠なものが手に入らなくなる深刻な事態であっても、それは、資本にとっては、商品の価格を吊り上げ、新しい商品を販売するチャンスなのである。ジャーナリストのナオミ・クラインが言うように、資本主義は人々の生活が破壊されるようなショックに乗じて、利益をあげようとする。惨事便乗型の「ショック・ドクトリン」は、今後気候変動とともにやってくることになる。

資本主義が限界を迎える前に、この地球が私たちの住むことができない場所になってしまうからこそ、今すぐに、経済成長に緊急ブレーキをかけなくてはならない。現実を直視しないで、資本の時間稼ぎに加担すれば、待っているのは、1%の超富裕層以外の庶民が苦しむ分断された格差社会である。とりわけ苦しむのは、途上国の人々、貧しい人々、マイノリティなど社会的弱者である。最も困窮する人にこそ、思いを馳せる必要がある。

一部の人間だけが豊かになるために奪い合う社会から、限られた資源を分かち合う社会への転換が必要だ。今後、気候変動によって、食糧や水、エネルギーの危機が起きる可能性が高いからこそ、もう一度脱商品化して、資本から自分たちの手に取り戻そう。それが〈コモン〉の考えである。「今だけ、金だけ、自分だけ」という発想を捨て、相互扶助の社会に転換していく。その先にあるのが〈コモン〉型社会、つまり、マルクスが思い描いたコミュニズムである。

2050年の脱炭素社会に向けた転換は、市場に任せていては不可能である。だからこそ、今回のパンデミックをラストチャンスだと思って、私たちは市場原理主義から脱却し、人間と自然の共存に向けた脱資本主義へと舵を切っていくことが必要である。公正で、持続可能な世界のために、国籍、人種、宗派などを超え、人類が創造的に連帯できるかどうか、それが今試されている。

参考文献:

1 斎藤幸平『未来への大分岐』(集英社、2019年)

2 斎藤幸平『人新世の資本論』(集英社、2020年)

参加費:無料。ただし、次の点にご注意ください。

今回は講師はオンライン参加となります。

参加を希望される方は必ず事前にお申し込みください。コロナで、参加者の人数制限がありますので、先着順に受け付けますので、当方からの参加申し込み受領の返信をご確認ください。

主催:福岡オルターナティブ研究会

FNA(エフナ・ADB福岡NGOフォーラム)

お申込みはFNAへ fna@minos.ocn.ne.jp

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