第29回福岡オルターナティブ研究会
志民社会学習会 叛乱的知性の「群島」状のつながりージェロニモからオバマ(?)までー
日時:2016年7月9日(土)午後2〜5時
場所:西南コミュニティセンター(西南学院大学キャンパスの最東南側)2階会議室
〒814−8511 福岡市早良区西新6丁目2−92
電話092-823-3952 (地下鉄西新駅3番出口から海側に徒歩数分)
テーマ:〈叛アメリカ〉の知的戦士たち──ジェロニモからオバマまで
講師:今福龍太さん(文化人類学者・批評家)
コメンテーター:中山智香子さん(東京外国語大学大学院教授、経済思想)
講師略歴:現在、東京外国語大学大学院教授として、新時代知性論、群島論、メディア論、書物論、修辞学等を講義。1980年代初頭よりメキシコ、キューバ、ブラジル、アメリカ南西部などで調査研究に従事。サンパウロ大学、サンパウロ・カトリック大学客員教授などを歴任。2002年からは奄美群島を舞台に遊動型の野外学舎〈奄美自由大学〉を主宰。著書に『クレオール主義』(ちくま学芸文庫)『ミニマ・グラシア 歴史と希求』『群島-世界論』『薄墨色の文法』(以上、岩波書店)『レヴィ=ストロース 夜と音楽』(みすず書房)『書物変身譚』(新潮社)ほか多数。近刊予定に『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(みすず書房)『原-写真論』(赤々舎)など。
報告要旨:詩も思想もアートも、究極的には「たったひとりの叛乱」です。けれども、その孤独な叛乱の、時と場所を超えての群島的な見えざる連帯こそが、世界を一元化しようとする政治権力をたえず揺るがすもっともラディカルな批判の拠点となってきました。19世紀末の米西戦争を境にして世界に浸透してゆく〈アメリカ〉なる侵略イデオロギーに対する原初的な「叛乱」は、象徴的にいえば、アパッチ・インディアンの戦士ジェロニモによってはじまったといえます。しかし歴史の時間や空間を横断するようにして、叛乱の種子はあちこちに散布されていました。アメリカ憲法を退けるヘンリー・ソロー。軍事帝国主義に抗うマーク・トウェイン。ディズニーに反逆するオーソン・ウェルズ。ニクソンに戦いを挑むパブロ・ネルーダ。核時代の歴史の改竄を告発するギュンター・アンダース。米軍基地の欺瞞を視覚的に暴く東松照明……。こうしたさまざまなジェロニモたちの見えざる系譜が、侵略的で搾取的な〈アメリカ〉への抵抗と叛乱を孤独に実践してきたのです。私たちはいまこそ、〈叛アメリカ〉のさまざまな思想と行動を過去150年に渡ってたどり直し、そうした運動を相互に結ぶ隠された連関を再発見すべき時にいます。それはとりもなおさず、アメリカ国家への隷属的な一心同体を決め込む現在の〈日本〉国家にたいしても、本質的な異議申し立てを提起するものとなるでしょう。〈アメリカ〉なる帝国的力によって押し出された自己破壊的な洪水に抗して闘う叛乱的知性の「群島」状のつながりを、近著『ジェロニモたちの方舟』(岩波書店、2015)に則して語りつつ、「オバマ」から「トランプ」へと崩落しようとする現在のアメリカへのオルターナティヴな視点も提示できればと思います。
《もはやアメリカにおいて、原初的叛乱者としてのジェロニモ直系の民族的系譜は途絶えたかもしれない。国家の同化圧力は、あまりにもみごとに、アメリカン・イデオロギーにたいする本質的な叛乱の芽を、摘み取ってきたからである。国家への従順と忠誠を条件に、庇護と自由をあたえるという欺瞞的な人民管理政策は、経済的な懐柔と、テクノロジーによる監視技術の進展によって、ますます巧妙さを増している。だが本書が群島的な旅のなかで考察してきたように、アメリカなる原理がグローバルな波に乗って世界を覆い尽くすほど、かえってジェロニモの情念は無数の場所に散布され、流亡し、あらたな抵抗の拠点を築いてきたのである……》
──今福龍太『ジェロニモたちの方舟』p.266
参考文献:
1 今福龍太『ジェロニモたちの方舟』岩波書店、2015
2 今福龍太『わたしたちは難破者である』河出書房新社、2015(とくに「群島響和社会〈平行〉憲法」の章、pp.12-31)
3 Barak Obama’s Speech in Hiroshima, May 27, 2016
以上のうち、2(「群島響和社会〈平行〉憲法」の章)と3については今福さんからPDF版を送っていただいていますので(3については日本語訳も付いています)、参加希望者で送付を希望される方には、ご連絡いただければ、別途送付致します。
参加費:無料(会の趣旨に共感される方はどなたでも参加できます)。
終了後、近くの居酒屋で講師とコメンテーターを囲む懇親会を予定しています。
主催:福岡オルターナティブ研究会、FNA(ADB福岡NGOフォーラム)
資料準備の都合上、参加を希望される方は事前にご連絡頂くようお願いします。
オルタ29